
MOTTO !食品衛生


食の安全とイノベーションをリードする
食品・医薬品開発と食品衛生学の専門性を融合した
唯一無二のコンサルティング
飲食店経営者のみなさま、食中毒事件を起こすとお店は再起不能になります。その前に、製造、販売に携わる従業員、パート、アルバイトの衛生教育を徹底しましょう!
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食中毒
01 はじめに
食中毒は,病原性微生物や自然毒,有害物質などに汚染された飲食物を摂取することにより,下痢や嘔吐などの胃腸炎症状,発熱,神経症状などの健康障害を引き起こす中毒の総称です。以前は,「食中毒は夏のもの」と認識されていましたが,近年では「夏は細菌性食中毒」「冬はウイルス性食中毒(ノロウイルス等)」の発生が見られ,年中食中毒の対策が必要になっています。
02 食中毒の分類

食中毒は,原因によって細菌性食中毒,ウイルス性食中毒,自然毒食中毒などに分類されますが,頻繁に発生しているのは「細菌性食中毒」や「ウイルス性食中毒」ですが、アニサキスなど寄生虫にも注意が必要です。
03 食中毒の発生状況
*最近、流行りの食中毒は?

2024年の食中毒の発生状況を件数でみると,アニサキスによるものがもっと多く、次いでノロウイルス、カンピロバクターの順になっています。
アニサキスの幼虫は、さば、たら、さんま、イカなどに寄生しています。魚介類は、新鮮なものを購入し、目視で幼虫を除去しましょう。冷凍(−20℃で24時間以上)や加熱(60〜70℃で1分以上)をすれば安心です。
カンピロバクターは、鶏肉に高頻度に存在しています。焼き鳥やつくねなどの鶏料理は、しっかり加熱をして食べましょう。たたきなど生の鶏肉は、極めて危険ですので、食べないようにしましょう。

2024年の食中毒の発生状況を患者数でみると,ノロウイルスが最も多く、次いでウエルシュ菌、カンピロバクターの順になっています。
ノロウイルスは、「ヒト→食品→ヒト」「ヒト→唾液・嘔吐物・排泄物→ヒト」の経路で感染します。また、症状が見られない「不顕性感染」にも注意が必要です。
ウエルシュ菌による食中毒は、飲食店や給食施設で多発します。煮物やスープなどしっかり加熱したものでも作り置きした場合、芽胞が発芽してウエルシュ菌が増殖しますので、大量調理の前日調理はやめましょう。
*注意が必要な季節は?

2024年の食中毒の発生状況を月別でみると,12月から3月の冬場はノロウイルスを中心としたウイルス性食中毒の発生件数が多く、気温の上昇する4〜5月から細菌性食中毒の発生件数が増加してきます。
細菌性食中毒の食中毒菌の多くは、室温が20℃以上になると増殖を始め、ヒトの体温付近で活発になります。気温が上昇する4月以降は、お弁当などの食品は可能な限り低温で保管しましょう。
*どこで発生しているの?


食中毒の発生件数は、飲食店が最も多く、2024年の全事件数の52.8%を占めています。患者数においても、飲食店が最も多く、2024年の全食中毒患者数の60.8%を占めています。飲食店における食中毒事件では、一般的に摂食者数が多くなることから、当然患者数も多くなってしまいます。
食中毒の発生は、当該施設の信頼性の失墜だけでなく、人々の生命や健康を脅かすことになります。また、地域のイメージダウンや観光客の減少など、計り知れない経済的損失を招きかねません。
飲食物を取り扱う経営者、従業員、パート、アルバイトのみなさまには、今一度衛生管理の徹底をお願いいたします。
出典:厚生労働省「食中毒統計・調査結果」
04 食中毒の原因物質

【概要】
平成9年に新たに食中毒の原因物質に加えられました。電子顕微鏡で観察すると小さな球形をしていることから,小形球形ウイルスと呼ばれていましたが、2002年8月に国際ウイルス学会で「ノロウイルス」と命名されました。食品中では増殖できず、ヒトの腸内で増殖し、糞便として排出され、水を汚染し、食品を汚染して再びヒトに入るものと思われます。また、ヒトからヒトへの感染も報告されています。
【原因食品】
カキ、シジミ、アサリ、ムール貝、サザエなどの貝類が考えられます。カキには厳しい成分規格が設定されていますが、大腸菌数が基準以下の場合でもノロウイルスによる胃腸炎が発生しています。また、ノロウイルスに感染した食品取扱者(不顕性感染の場合もある)から調理器具や飲食物を介して感染することもあります。なお、ノロウイルスに感染した場合、長期にわたって糞便中にウイルス遺伝子が検出される報告(成人:病後24日、小児:最長174日)があることから、臨床症状が消失しても食品を取り扱う場合は十分な衛生対策が必要です。
【中毒症状】
主な症状は、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛です。 発熱をともなうこともあります。
【予防方法】
かきなどの貝類は、生食を避け、十分に加熱調理(85℃、1分以上)してから食べましょう。飲料水は煮沸してから飲むようにしましょう。調理の際にはマスクや手袋を着用しましょう。下痢や嘔吐など風邪に似た症状があらわれた場合には調理しないようにしましょう。包丁、まな板、ふきんなどは熱湯あるいは塩素系漂白剤で殺菌しましょう。二次感染の予防としては手洗いやうがいが有効です。
【発生状況】
ノロウイルスに食中毒は、大幅に減少してきました(速報・8月1日までに厚生労働省に報告のあった事例)。これからの時期、カンピロバクターやウエルシュ菌など細菌性食中毒が増加してきます。食品取扱者のみなさんは、体調管理・衛生管理の徹底と検査の実施をお願いいたします。
出典:厚生労働省「食中毒統計・調査結果」



【概要】
ウシやブタの流産の原因菌として古くからよく知られていた菌ですが,わが国で食中毒菌として注目されるようになったのは1979年以降です。食中毒の原因となるのは主にカンピロバクター・ジェジュニとカンピロバクター・コリの2菌種です。ウシ, ブタ,鶏,犬,猫などの家畜,家禽,ペットが保菌しています。特に、鶏は保菌率が50〜80%と高くなっていますので、注意が必要です。らせん状のグラム陰性桿菌で,好気的条件下および嫌気的条件下ではほとんど増殖しませんが,3~15%程度の酸素濃度の存在下(微好気性条件下)で増殖します。
【原因食品】
食肉(特に鶏肉),調理食品,魚介類,水などが原因食品となります。特に、市販の鶏肉の約60%がカンピロバクターに汚染されているという報告がありますので、生や十分に加熱されていない鶏肉は絶対に避けましょう。
【中毒症状】
潜伏期は通常2~7日と長いのが特徴です。症状は,下痢,腹痛,発熱(37~40℃)などで,少量の菌の摂取で感染します。なお、この食中毒発症後1〜3週間で「ギランバレー症候群」を発症することがありますので、細心の注意を払いましょう。なお、「ギランバレー症候群」は、手足に力が入らなくなる神経系の病気ですが、重症になると呼吸困難に陥ることもあります。治療には、半年から1年を要しますので、「生の鶏肉」は絶対に食べないようにしましょう。
【予防方法】
熱に弱いので,食品は必ず加熱調理しましょう。また,25℃以下では増殖が抑制されますので,食品は冷蔵庫や冷凍庫で保存しましょう。飲料水には,必ず塩素殺菌あるいは煮沸殺菌したものを使いましょう。

【概要】
クジラやイルカの胃に寄生して成長し、虫卵を排泄し、海水中で孵化した幼虫がサバ、アジ、イカなどの魚介類に摂取されて内臓や筋肉中に定着します。これらの魚介類をヒトが摂取することで、アニサキス症を発症します。
【原因食品】
サバ、イワシ、タラ、アジ、イカなどの海産魚介類の生食が原因になります。
【中毒症状】
アニサキスの幼虫がヒトの胃や腸壁に穿入し、激しい腹痛や嘔吐などの急性胃腸炎症状を引き起こします。また、アニサキスアレルギーによるアナフィラキシーを起こすこともあります。
【予防方法】
アニサキスは熱や冷凍に弱く、60℃で1分以上加熱するか、−20℃で24時間以上冷凍することで死滅しますので、適切に加熱・冷凍処理しましょう。生食は、リスクが高いため推奨しませんが、魚の死後、内臓に寄生した幼虫が筋肉に移行することがあるため、内臓を速やかに取り除く必要があります。なお、酢で締めたり、塩漬けにしてもアニサキスを死滅させることはできません。
【発生状況】
近年、増加傾向にある寄生虫による食中毒です。通年通して発生しており、発生件数と患者数はほぼ一致しています。すなわち、アニサキスの食中毒は1件1〜2名です。刺身や寿司など海産魚介類の生食が原因の多数を占めています。なお、月別発生状況は、令和7年厚生労働省の食中毒発生事例(速報・8月1日までに厚生労働省に報告のあった事例)のデータです。
出典:厚生労働省「食中毒統計・調査結果」




【概要】
黄色ブドウ球菌による食中毒は「毒素型食中毒」に分類されます。黄色ブドウ球菌が食品中で増殖する際に産生する毒素「エンテロトキシン」を摂取することによって発症します。エンテロトキシンは非常に熱に強く、100℃で30分加熱しても分解されません。そのため、一度食品中で毒素が作られてしまうと、加熱調理をしても食中毒を防ぐことはできません。
黄色ブドウ球菌は、健康な人の皮膚、鼻や喉、傷口などにも存在しているため、食品を扱う人の手指を介して食品に付着します。
【原因食品】
黄色ブドウ球菌食中毒は、調理する人の手指が直接触れる機会の多い食品(おにぎり、弁当、和菓子、乳製品など)が原因となることが多いです。
【中毒症状】
潜伏期間は比較的短く、食品を摂取してから平均3時間程度(30分〜6時間)で発症します。主な症状は、吐気・嘔吐、腹痛で、まれに発熱やショック症状を伴うことがあります。
【予防方法】
黄色ブドウ球菌による食中毒を予防するには、「菌を付けない」「菌を増やさない」ことが重要です。手洗いの徹底、食品の10℃以下での保存、手指に切り傷や化膿巣のある人は食品を直接触ったり調理をしない、さらに調理にあたっては帽子やマスクを着用することが予防方法になります。

【概要】
人や動物の腸管内、土壌、下水など広く自然界に分布している菌で、グラム陽性の偏性嫌気性菌です。
この細菌は高温でも破壊されない芽胞を作ります。この芽胞は、加熱調理をしても生き残り、食品の温度が発育に適した温度まで下がると芽胞が発芽して急速に増殖を始めます。食品の中で増殖したウェルシュ菌を接種すると、小腸内で増殖してエンテロトキシン(毒素)が産生されます。
この食中毒は、飲食店、給食施設、仕出屋など大量調理の施設で発生するケースが多くなっています。
【原因食品】
原因食品としては、肉類、魚介類、野菜およびこれらを使用した煮物です。給食で提供されるカレー、シチュー、スープなどのように、前日に大量に加熱調理され、大きな器のまま室温で放置された事例も多くなっています。
『加熱済食品は安心』という考えは、ウェルシュ菌には通用しません。
【中毒症状】
潜伏時間は約6~18時間、平均12時間で発症します。腹痛、下痢が主で、特に下腹部が張ることがあります。
【予防方法】
環境やヒトを含む動物からの汚染を避けるため、食材や手指は十分に洗浄しましょう。また、前日調理はできるだけ避け、加熱調理したものはなるべく当日中に食べきるようにしましょう。一度に大量の食品を加熱調理したときは、本菌の発育しやすい温度を長く保たないように注意し、やむをえず保管する場合は、小分けしてから急速に冷却しましょう。