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食品添加物

食品添加物にはどんなものがあるのか、必要なのか、安全性はどうなのかについて考えてみましょう。

豪華なお弁当

食品添加物

01 はじめに

 私たちは,毎日欠かさず食事をします。これは当然私たちが健康的に生活するために絶対必要なものです。したがって,栄養バランスがよく,安くて,美味しいのが理想的な食品です。最近では,加工食品の種類も多くなり,手軽に美味しい料理が食べられるようになりました。冷凍食品,レトルト食品,インスタント食品などの加工食品のおかげで私たちの食生活が便利で楽しいものになったことは言うまでもありません。こんな便利な加工食品を作るためには食品添加物が必要なのですが,この食品添加物は非常に評判が悪く,「発がん性がある」,「アレルギーになる」などとまるで毒物のような扱いを受けています。それでは,この食品添加物は本当に毒物なのでしょうか? 

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私は,製薬メーカーの研究所に約10年ほどいましたが,「薬(化学的合成品)=発がん性,アレルギー性」といって騒いでいる患者さんをあまり見たことがありません。一方,同じ化学的合成品でも食品添加物は「食品添加物(化学的合成品)=発がん性,アレルギー性」といって騒がれるわけです。食品添加物も医薬品と同じように安全性のチェック十分に行われていますし,違うのは薬は作用が出る量(比較的大量)を服用しますが,食品添加物は作用が出ない量(ごくわずか)を摂取するということぐらいです。この食品添加物,本当に危険なものばかりなのでしょうか。 

 インターネット上で毒物として騒がれている食品添加物のなかに,「これは少し過剰反応では?」とおもわれるものがいくつかありました。ここでは,食品添加物の安全性について皆さんに正しく理解していただくために,食品添加物を少し勉強することにしましょう。

02 食品添加物がなかったら

 スーパーマーケットには,様々な食品が所狭しと並べられています。これらの食品のうち食品添加物が使われているものをすべて店頭から取り除いたらどうなるでしょう。お惣菜や揚げ物,豆腐,漬け物,お弁当なども調味料,着色料,豆腐凝固剤,増粘剤,発色剤,酸化防止剤,保存料などが使用されているためほとんど取り除かれます。さらに進んで,海老フライやハンバーグなどの冷凍食品には,調味料,酸味料,膨張剤,乳化剤,着色料など,アイスクリーム,プリン,ヨーグルトなどの乳製品には酸味料,乳化剤,香料,安定剤,着色料などの添加物が使用されています。さらに,コーラ,果汁飲料などの清涼飲料水には,酸味料,甘味料,保存料,酸化防止剤,香料,着色料が含まれています。チョコレートやポテトチップス,キャンディーなど菓子類,ハム,ソーセージなどの食肉加工品,砂糖,しょうゆ,みそ,ソースなど調味料,漬け物,缶詰といったもののほとんどに食品添加物が使われています。

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さて,残ったものは,緑色で示した野菜,果物,刺身,鮮魚,精肉,牛乳などです。しかし,果物でも外国から輸入されたグレープフルーツやバナナなどには防かび剤が使用されていますので,3分の1ぐらいは取り除かれます。こうして見てみると,スーパーマーケットに並んでる食品のほとんどに食品添加物が使用されていることがわかります。

03 食品添加物の分類

 一般に,「合成」であるか「天然」であるかが食品添加物の良否を決めるキーワードになっていました。しかし,本来の「安全」は,「天然=安全,合成=危険」というイメージではなく,科学的に安全であるかどうかが大切なのです。

 平成7年の食品衛生法改正により,発がん性試験など安全性試験を実施して安全性が確保されているものと使用実績はあるが,必ずしも安全性の根拠となるデータが存在しないものに分類されました。

 

 すなわち,食品衛生法により厚生労働大臣が安全性や有効性を確認して指定した「指定添加物」,天然添加物としてすでに使用実績のある「既存添加物」,長い食経験のある「天然香料」,「一般に食品として飲食に供されているものであって添加物として使用されている品目(一般飲食物添加物)」に分類されます。

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04 指定添加物

食品添加物として指定されるためには,「人の健康を損なうおそれがなくかつその使用が消費者に何らかの利点を与えるもの」でなければなりません。「食品添加物として指定されるための基本的考え方」にしたがって審査され,その必要性が明確になったものだけが食品添加物として認められます。「味や風味をごまかす」「粗悪な素材で加工食品を製造する」などの理由で使用が許可される食品添加物はありません。

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食品添加物の指定にあたっては,厚生労働大臣あてに食品添加物の成分規格,使用基準,安全性などに関する多くの資料を揃えて提出しなければなりません。特に,安全性関しては反復投与毒性試験,発がん性試験,繁殖試験や微生物,培養細胞などを使った様々な試験をして,安全性を科学的に証明しておく必要があります。特に,発がん性試験は最も大事な試験で,もしこの試験で「陽性」と判定されたものは基本的に食品添加物として使用されることはありません。これらの試験を実施するために,数億円〜数十億円の費用がかかります。

 食品添加物として認められるためには,医薬品と同レベルの安全性試験をクリアしないと認められないということです。

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05 既存添加物

「既存添加物」は,以前天然添加物として使用されていたもので,平成7年5月24日の時点でわが国ですでに使用されており,長い食経験?のある489品目については,引き続き食品への使用や販売が認められることになりました。しかし,安全性に問題があるとされたものについては,使用するべきではなく,また使用実態のない既存添加物についても既存添加物名簿から消除することとなりました。現在,厚生労働省が中心となって既存添加物の安全性に関する見直しが順次行われています。

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 「既存添加物」の安全性は,FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)においても評価されています。よく見かける「既存添加物」の安全性を調べてみましょう。

【評価基準】

特定しない・制限しない:食品に存在する成分,食品とみなされるもの,ヒトの代謝物とみなされるもので,極めて毒性の低い物質

ADI設定せず:データが十分になく未評価あるいは食品添加物としての使用が不適当なもの

現在の使用を認める:現在の特定用途および摂取量での使用は毒性学的に問題はないと考えられるもの

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過去に天然添加物として使用されていたもの(489品目)のうち,安全性に問題のあるものや使用実績のないものは削除され,現在の既存添加物(365品目)はほぼ安全性に問題はないものと思われますが,コチニール色素はアレルギーを誘発する可能性が報告されていますので,注意が必要です。

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